TTT『戸惑いの惑星』雑感
自分の雑感の覚書だからいつ上げてもいいのだ。と言い訳。
思い返すほど脚本のあちこちに物語の布石が散りばめられていて振り返るのが面白いお話だったと再実感するのだった。
鳴らすのは所謂「黒子」の方。みんなお洒落なカフェの店員のように可愛い衣装でお揃い。舞台の転換の場面でも振付のように舞台を変えていく。お見事。
そしてぬるっと普通に現れるトニセンの面々。
椅子に座っているんだけどみんな個性が出ている。時に印象的なのは坂本さん。足長っ!坂本さんは青色、長野くんは灰色、イノッチは白系のお衣装。
みんなお衣装が適度にふわっとゆるっと長めなのがいい。特にイノッチの萌え袖感がたまらない。その後の展開と相まって抱きしめたくなる。
「最近手紙で痛い思いをしたから」「手紙にいい思い出ないから」等と手紙を読むのを断る坂本さんと長野くんの台詞は、三池が大好きだった彼女から送られてきた別れの手紙、由利が母親から「奇跡」の事実を告げられた手紙や妹が残した手紙、というその後の展開を暗示。
結局イノッチが代読した手紙「戸惑うことは?」でフリートークならぬ物語が始まってました。
物語後半でもこの便箋と手紙は出てくるけど宇宙と月をモチーフにしていてとてもかわいい。何故これをグッズ化しなかったのかと惜しまれる。
坂本さん⇒占いに戸惑う。占いが当たるということは運命が決まっているということ。運命が決まっているのが嫌で嫌で仕方がない。運命に逆らおうとしても、その逆らおうとすること自体が運命だったら?だから占いに戸惑う。
長野くん⇒夜空の星に戸惑う。星の多さ、宇宙の広さ。天の川をF1で駆け抜けたらどれぐらい時間がかかる?光だったら?人が死んだら自分と繋がっている星に行くという説がある。じゃあどれが自分と繋がっている星だろう。宇宙はビッグバンでできた。宇宙ができるまでは空間も時間も存在しなかった。空間も時間も存在しないってなに?どういうこと?だから夜空の星に戸惑います。
イノッチ⇒気が付いたら知らないところにいることがある。子供の時に途中どこを歩いてきたか覚えてないけど気が付いたら家だったことはない?この間、気が付いたらディズニーランドのクラブ33にいた(ただし夢)。
トイレに行ったら扉の奥に暗闇の遠くがぼやっと光っていて水が立っていた。そこでそれは水面に移った星空だと気付く。月は銀色っぽい色。ビックリしてスタッフに伝えようとしたらスタッフが全員ミッキーマウスになっていた。
だから「ミッキーマウスはこの世に1人しかいないんでしょ」と苦情を言ったらミッキーマウスに「そうはおっしゃいますけど、だったらイノッチはこの世に一人って言いきれますか?」と返されるイノッチ。
井「だから言ってやったんだよ。イノッチはこの世に一人です」
坂「あーいっちゃったか!」
という会話。坂本さんの台詞の「言っちゃった」とも三池の台詞の「(現実から意識が飛んで)行っちゃった」とも聞こえる。
この会話を発端とする「俺もイノッチだよ」のあたりがさらに現実から物語へ移行する境目で、坂本君が心配そうにいう「何言ってんだよハセッチ」からは完全に三池・由利・長谷川にいる世界に足を踏み入れている。
そしてイノッチが意識を失って倒れかけるところから物語は本格的に開始する。
三池と由利の会話に出てくる「長谷川もよく由利の店に行ってたじゃん」という台詞はあとから思い返せば、由利の妹が好きだった長谷川が由利の妹に会いたくて何度も通ってたということが察せられる。…切ない(´;ω;`)
全体を通して長谷川は白系統の衣装で消えそうな儚さ・透明感を感じた。
長谷川の書いた小説は、全てが本当に起きた出来事ではないけれど、本当のことも織り交ぜられたストーリー。
未来の自分が伝えられないことをどんな思いを抱きながら長谷川は書いたのだろう。
小説の冒頭、小説を出版社に持ち込んで断られても断れても頑張る長谷川の気持ちを慮るとなんとも言えない気持ちになる。
けれど文章を書くことを褒められて小説家になることを考え始める長谷川の活き活きとした表情はとても嬉しそうだったし楽しそうでよかった。
友人役で小説書くのヤダヤダと駄々こねる小学生な坂本さんと長野さんが、井ノ原さん演じる長谷川と別のベクトルで可愛さが臨界点まで上昇してましたね。眼鏡教師二人もよい。
編集者もいい。胡散臭いところが特によい。(ほめてる)
脅されてる長谷川もかわいそうなんだけどかわいい。守ってあげたくなる、その存在。尊い。
由利が幼いころに見た奇跡について「スプーンを机に押し当てて曲げました」と言った時の、由利母の方を見て「おい!」と言いたげに指をさす教授と、頭を抱える由利の姿が「シリアスな笑いってこういうのをいうんだろうな」と思いながら爆笑してしまう。
うん、由利母は卑怯だ(ほめてる)
この場面から演出含めて急に坂本さんミュージカル(略してまーじかる)になった印象を受けて若干戸惑う。だがのびのび恋をして歌う彼の姿を眺めるはよいものだ。これはきっとG2さんからのサービスショットだ。
三池は彼女からの手紙と思っていたけれど、後々物語で長谷川≒井ノ原さんが演じる役が代読した手紙は、他ならぬ長谷川が書いた手紙だと伺い知ることができる。
長谷川の小説は集合的無意識とも繋がって知ったこと(推測)や本人の経験が交じり合って作られた世界で、だからこそこの世界で井ノ原さんが演じた役は長谷川自身の化身であることも意味していたのかもしれない。
一方で小説の中の三池君は若干怒りっぽいけど、現実の三池君は最初強く出ているのがおろおろしたり丸め込まれて最終的には「係だからな!」って言っちゃうしかわいい。
長谷川君の中で由利君は好きな子のお兄さんだし研究者だしで理知的なイメージがあり、三池君は大切な人の大好きな人だけどどこかで嫉妬もあってあのキャラなのだろうか。
そう仮説を立ててみると、小説の中の二人に長谷川君の深層心理が少し透けて見えているようで興味深い。
舞台演出的な「時間が経っていつの間にか病院からバーに移動して読んでますよ」だと思ったら本人たちも気づかぬ間にバーにいたという事実を知り震える。観客の「舞台での暗黙の了解(想像の補完)」を逆手に取られた感覚!
さっきのバーではなかったトイレもあったから現実と小説の違いを出すためだけかと思ったら、まさかの冒頭のフリートークのトイレに繋がるという。
このあたりからの凄まじい勢いで伏線回収しまくっててそれまで抱いていたもやもやや疑問が氷解していった。
もし妹さんが生きていて三池さんとくっついていたら、三池さんはずっと由利君に義弟としてこんな扱いを受けることになったのだろうか。
2回目の扉を開いたときの会話…長谷川の話していた冒頭のフリートークの話。ここであの会話は現実世界の観客だけでなく三池や由利君たちも聞いていた話=すでにあの時に戸惑いの惑星の世界観に入っていたことを気付く。
そして冒頭の話からの3回目に開いた扉から入ってきた心が遠くに飛んでいるような透明感がさらに増した長谷川と歌われる「ちぎれた翼」。まさかのここ!ここで歌うの!時を超えて、見守るしかできなかった…きっと長谷川のことを思うと胸が締め付けられる。さらにここまで来て冒頭の「揺れる水面 銀色の月」がちぎれた翼の歌詞と被っていたことに気付く。
歌う曲の伏線、冒頭から張り巡らされていた。
見苦しいものが視界の端に入っていたら申し訳ないと思いつつ涙が止まらない。そんな顔で泣かんでおくれよー!あぁでも泣いている顔も美しい(正直)
集合的無意識を通じて彼女の手紙は愛する三池に届き、長谷川が自分を失う前に出した手紙は三池と由利のもとに届いた。
けれどもずっと出すことのできなかった長谷川の手紙は、もう一つの可能性である誰も知らない場所を彷徨っているのかもしれない。
長谷川君は昔から瓶などに手紙を詰めて出すのが好き=宛名のない手紙を出し続けていたわけで、その手紙も誰も知らない場所を彷徨っているのだろうか。
唯一届いた長谷川の手紙は三池と由利の元だと思うと込み上げるものがあるし、切ない。小説家デビューさせていろんな人の元へ届いてほしかった。
確かに自分の席からも閉じる瞬間一瞬見えたのは白紙だった。
けれど三池が持っていたのは木炭っぽかったし描く音はしていたのできっと見える絵として描いている。それは由利は長谷川の描くところを見て「お前、それじゃ…」と呟くところからも推察できる。恐らく由利君は描かれていた絵を見て反応していた。と自分は考える。
つまり劇中では「描かれていた」はずだけれど、現実ではそれを敢えて形にしなかったのではないか。
三池の言葉を借りるならば「この絵は口にした途端に自由を失う」。
キャンバス上の絵も「絵を具現化した途端に(観客側の想像の)自由を失う」ため敢えて白紙にしたのだと思う。それにより観る人にとっていろんな解釈や考えができる。
それを狙った演出なのだと思っている。そして見た瞬間、長谷川の目と声に色が戻った気がしたので、三人に少しでも幸せな未来が待っている暗示だと思いたい。
三池&由利から見たハセッチと、ハセッチから見た三池&由利だ。
そして歌詞の中に唯一?出てくる「水を挿している Thank you my girl」。三池から見た愛し合った日に見た由利の妹さんの姿なのかな。短い一週間の光景だったけど、きっと三池の目には幸せな光景だったに違いない。
以上。雑感 兼 覚書でした。
TTT『戸惑いの惑星』現実の時系列の整理
『戸惑いの惑星』が千秋楽を迎えて数日経ちました。考察や感想を見て回って人によってとらえ方が異なっていて新たな発見がたくさんあります。
読んでいると逆に自分が思ったことと異なることが鮮明になっていくところがあります。そこで一度頭の整理のため時系列順に並べてみることにしました。現実で起こった(長谷川の小説以外のこと)が中心です。人によって解釈が違うかもしれません。
<十数年前>
長谷川、高校で由利の妹を好きになる。よく由利の実家の店に通う。
由利の妹、三池を好きになる。
由利の妹、三池への想いを込めた曲を作る。由利もその曲を聴く。
文化祭で、吹奏楽部で由利の妹が作った曲を演奏する。三池はその曲を気に入り楽譜を取り寄せる。(長谷川も由利の妹の曲の楽譜を取り寄せた?)
三池、親の転勤で転校する。
長谷川、小説家を目指す。
<約10年前>
長谷川、小説を持ち込むが断られる。127回持ち込むまでは諦めずに頑張ろうと決める。
<約半年前>
長谷川、127回目の持ち込みを断られ、紹介された手紙代筆業になる。
由利、とある画家の絵を分析しようとして断れる。学部の予算を打ち切られる話を教授とする。
由利の妹が余命半年と宣告される。
長谷川、人格喪失症の予兆を感じ始める。
ジャズ33で由利の妹と三池が出会い、恋に落ちる。
由利の妹、三池に阿修羅の絵を描かれた人物が事故で亡くなったのをニュースで見て知る。
三池の描いた絵を見て由利の妹は三池から離れる。
長谷川のもとに由利の妹が表れて手紙の代筆を頼まれる。
長谷川は由利の妹の話を聞いて引き受ける。由利の妹を記憶喪失に仕立てた手紙を書く。
由利の妹の手紙を受け取った三池は絵が描けなくなる。⇒塗装業となる。
<約半年前~昨日までの間>
長谷川に人格喪失症の症状が出始める。
由利の妹、三池宛の宛名のない手紙を書いて机の引き出しにしまう。
長谷川、由利と三池宛に真実を綴った手紙を書く。
長谷川、由利と三池、そして自分自身に宛てたメールを書く。
長谷川、小説「迷いの病の世迷い言」を書き始める。由利の妹から聞いた話、集合的無意識にアクセスしたのもこの頃?
クラブ33で長谷川、由利、三池が出会う。
長谷川、由利と三池に夢の中の話(クラブ33のトイレの話)をする。←冒頭の場面はここ?
長谷川、人格喪失症の症状がひどくなり入院する。由利と三池が長谷川の病院をたびたび訪れるようになる。
<49日前頃>
由利の妹が亡くなる。
<数日前>
由利は母から手紙をもらい、"奇跡″の真実を知る。
<昨日>
長谷川、眠り続ける。
由利、母親から辞表を教授に出す。シェイクスピアのやりとりをする。
<小説を読み始める当日>
由利と三池、長谷川の見舞いに訪れる。
由利と三池、長谷川が書いた小説を読み始める。⇒いつしか「ジャズクラブ33≒宇宙の外?≒長谷川の小説の中?≒集合的無意識」の中へ。
その中で長谷川の想い人=三池の彼女=由利の妹の手紙を受け取り、真実を知る。
<小説を読んだ翌日>
由利と三池は長谷川のもとへ。三池は長谷川の似顔絵を描く。
長くなったので伏線や感じたことは次回の記事で。